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さとう ウィメンズクリニック | 説明 | |||||||
天童駅から南へ約1キロ、JR奥羽線沿い近くに位置する産婦人科医院です。敷地は地方都市の典型的な新興住宅地として顔と、量販店等が建ち並ぶ幹線道路脇としての顔の両面を持ち合わせています。またどこを切っても正面や中心が浮かび上がってこないこの不思議な魅力を持った扇形状に対して、南側には子供達の声がたえない南小畑東公園が広がります。
クライアントの要望は、世間一般にある医院のイメージを払拭し、居心地の良いあたたかな空間を形成すると共に、適度な非日常的空間を患者に対し提供したいということでした。また1階を外来診察部、2階を分娩・療養部とした中でスムーズな動線や管理体制、なおかつ将来的なメンテナンスを重視した建物であることが強く望まれました。 敷地に正面性がないということで、その中だけで動線や配置等の答えを見つけ出すのではなく、航空写真や都市計画図等を手がかりに近隣はもとより天童市や山形県を含めた環境の中で建物配置を意識するようにしています。全体の中で自然に流れていく、そのような「たたずまい」を目指すことによって、南北を貫く軸線を導き出しました。それらを直感的に受け止めることで、この建物は自然でありながら象徴的な「たたずまい」として人を招き入れます。大きな軒下は雪や雨風から身を守るのと同時に、心理的ににクッションのような役割を果たします。そして中心には光や風、自然に満たされた中庭があります。一度、外と切り離すことにより生じるプライベートな空間をつくることにより、懐深く迎えてくれるような錯覚、一時的な自分の場所を確保することを創造しています。また中庭は閉じすぎないように、再び外へと柔らかく結びつき、公園側へのフィルターの役割を果たすと同時に、守られた環境を形成しています。つまり中庭という中心へ向かう感覚から、次は外部へほどよく解き放たれる感覚こそが、日常に戻すための非日常的空間の原動となっています。 外観は1階の外来診察部に対して2階の分娩・療養部を迫り出すことにより浮遊感を生むと同時に地元山形の金山杉板張りによる自然素材と板金張りの工業製品との対比により、ほどよい緊張感を与えています。 そして2階レベルを高くすることにより月山などの美しい眺望を内部に取り込みながら、生じる1階天井懐をメイン設備スペースとし、将来の設備レイアウト変更や機器の更新にも対応できるよう配慮しています。 患者が過ごし、食事や談話を楽しむ空間と、医療空間やスタッフスペースとは配置ボリュームを別にすることにより病院にいることをふと忘れてしまう配置を考えています。患者とスタッフのスペースや動線を明快に分け、1階、2階共に動線をループ型とることにより、看護上のチェックもスムーズに行え、避難上もあるいは患者が散遊する上でも利点が多い構成としています。 自己へ集中する意識が出産を期に、急速に開放されていく感覚をやさしく包み込み、また生まれてくる赤ちゃんが公園で遊ぶ元気な子供のように育っていくよう、すべてを見届け、開放してくれると思います。 |
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